久しく書いていなかったこのブログ。

Twitterで流れてくる演者さんのキラキラしたブログをいくつか読んで、たまには舞台のことを書いてみるかと思い立った次第。

とはいえ、自分はそんなキラキラしたことを書くのは脚本上だけでお腹いっぱいだから、備忘録を兼ねて今回思ったことやら起こったことやらを書くことにする。

おそらく表に出ている作品に対する感想などのブログたちとは毛色が全く違う内容になるので、裏側に興味のない人はここまでで読むのをやめるのが良いかと思います。

※本記事の音声バージョンはこちら
https://youtu.be/6cqZRxKmuVU

最初は請けないつもりだった


依頼の話を持ってきたのは通称はるちゃん(個人的呼称)。

外部で演出をやることになったから音響で入って欲しいとのこと。

「どんな内容?」

「漫画が原作です」

「(察し)ムリ」

「何でですか!?」

最初のやり取りはこんな感じ。

基本的に小劇場限定と銘打って音響をやる理由の大半は、

マイクの有無

これに尽きる。

細かく言うと長くなるので省くが、演劇の音響において「演技部分のマイクによる拡声」が有るか無いかによって、やる内容が大きく異なる。

多人数がピンマイクになればそのコントロールや管理の為の人を呼ばないとできないし、何ならA帯域の免許(何月何日何時から何時までこの周波数帯域を使うから他の人は使わないでね申請するための資格)が必要になってくることにもなる。

B帯域じゃさすがにピンは怖い。

かといって、PCC160(バウンダリーマイク)やガンマイクでフォローできるかと言えば、それは内容次第となる。

会話劇メインでガチャガチャしない芝居なら何とでもなる(ちゃんとした人なら)だろうが、ミュージカルみたいに踊り歌うとかなったらまあまあムリになる。

そもそもがちゃんとPAできるかも怪しい。

・・・・・・・

この話は面白くないね。

とにかく演者の地声だけで勝負できるような劇場サイズと内容のモノを基本的に請け負ってきた身としては、

漫画原作=2.5次元=マイク有り

の単純な思考からすると

「これは請けるべきではない」

となるのだ。

「他の人の方がいいと思うよ」

こう答えた自分に、はるちゃんは

「大丈夫です。○も○○も○○○○○になりますから」

などと追い込みをかけ、その後も色々と話をした結果請け負うことになった訳だが、、、

これが長い闘い?になるということをこの時は知る由もなかった、、、

こともなく、

「結局なんだかんだあるんだろうなー」

とある程度覚悟していた自分。

はるちゃんの現場で大変じゃなかったことねーもん。

この予感は正しかったな。

終わってみての素直な感想


何だかんだあるのは毎度のことで、トータルで言うと

「いい刺激になった」

というのが本音かな。

個人的な感想ね。

作品としてどうだったかと問われたら

「真っ直ぐ青春してるいい舞台だった」

と答える。

ここが良かったーとかあれが凄かったーとかじゃなくて、ただただ純粋に真っ直ぐ演者が取り組んだことがそのまま出たいい感じの舞台。

、、、語彙力ねーな。

でもこの「ただ真っ直ぐにやる」ってのは簡単そうで全然簡単じゃないのよ。

特によろしくない小劇場演劇に浸かった人なんかにはとても難しい。

これも生々しい話になるから割愛するけども、とにかく今回の舞台がこんな真っ直ぐに仕上がっていったのは間違いなく出演者さん達の力の賜物。

役としてどうなのか以前にそれぞれ個の存在で魅力勝負ができる演者陣だったのが大きい。

改めてスキルだ技術だ言う前に

「そいつ自身に魅力があることが大前提」

という基本的なことを再確認したそんな感じ。

そして面白かったのが、演出はるちゃんもその真っ直ぐな気にあてられてどんどん浄化されていくこと。

最終的には慈母みたいな顔になっていったから笑っちゃったよ。

色んなことに揉まれに揉まれて物事を真っ直ぐに捉えられなくなりがちな我らですら浄化してくれるパワーがあるんだから、それがお客さんに響かないわけねーよな。

自分も休憩込みで110分、マイクオペで気を張っている分を差し引いても毎回しっかりと芝居を集中して観ていられた点を考えたらやっぱりいい芝居だったんじゃないかなと思う。

終わらない歌のMIXの世界


今回の製作準備で一番時間がかかったのが歌のMIX作業。

だって俺歌モノやんないんだもん

過去に何度かやったけども、今回は録音の時点から戦々恐々。

スケジュールもキツキツだから録り洩らしや失敗見逃しなんてできないプレッシャー。

当たり前だと言われたらそこまでだが、そもそも分野が違うんだゼ。

そりゃ怖いゼ?

ありがたいことに歌唱指導の先生が諸々ゴリゴリアドバイスをくれたので、何とかかんとか形にはなったのでホッとはしている。

MIXしては送り、こうした方がいいとアドバイスをもらい、また作り、また送り、、、

進研ゼミみたいになってたな。

先生もヤキモキされただろうが根気よくお付き合い頂き感謝感謝です。

MIXした色んなパターンのやつをスマホに入れて移動中に聴いてはあーでもないこーでもないと唸る毎日。

歌のMIXする人って凄いんだなと実感した日々だった。

ちなみにとある男が録音の日に鼻の骨折れてて鼻血がやべぇと言いながら黙って気丈に録音する姿を見て

「ああ、ゴリゴリの体育会系&綺麗事真っ直ぐ野郎なんだな」

と認識することに。

打算も何もないこういう奴はやっぱいいねと録音のモチベーションが上がったのを覚えている。

それぞれの主観的感想~ザックリ


・座長

同じ岐阜県羽島市出身という希少な存在。
なかなかこの仕事をしていて出会うことがないので、まずはそこだけでテンション上がる。

Q.羽島市の名産は?

A.レンコン。

即答する彼を前に思わず

「こいつは本物がきたぜ はるちゃん!」

閑話休題。

最初聴いた時から声大丈夫なんかな?と思ったけど、当人も問題ないと言うし、枯れる感じもなかったから杞憂に終わって良かった。

気合いと勢いだけの猪突猛進型かと思いきや意外と強か且つ冷静にオトナと交渉する術も選択肢にあるのが面白い。

人付き合いが器用なわけでもなさそうだが、座長として熱く振る舞うエネルギーは単純にいいもんだった。

歌のラストは毎回気合い入ってて良かったね。

野球の動きの感覚は俺とは違ったのでSE合わせるのがちょいとイマイチ。

円陣と締めの挨拶裏返る度に音照二人で笑ってた。

これからも曲がらず生きていって欲しいな。

 

・噂のエニー

9000人の屍の上に立つ女の子(個人的冗談)。

その異名に偽りなく、発声 特に歌パートにおいては比類なきパワーの持ち主。

彼女が歌う時だけマイクレベルを落とさないといけないのでいつも身構えていた。

ブースで聴いていてもハッキリと分かる歌声は魅力的よな。

でもちっちゃい。ホントにちっちゃい。

芝居はブレなくて見てて安心。

個人的には彼女がジャンプする姿が何か好きだったな。

 

・野球できる女子

ちゃんとしたアンダースローができる女子。

台詞のアクセントが何だか不思議な時がよくある。

アップの時に舞台上で

「早巻き(台詞を早送りのようにテンポアップしてやり取りする稽古)をやる意図が解らない」

と素直に他の人に質問して何とかやろうとしているその姿勢が印象的だったな。

とにかく解らないことは何でも聞いてとにかくやってやろうという根本的なスタイルがとてもいい。

カーテンコールでの言葉と涙は、見てるこっちからすればそりゃそうだよなーと。

仕事と言えばそれまでだけど、お疲れ様でしたと言いたくなる女子だった。

、、、えらそうかな?

個人的には彼女の

「~になったのさぁーあ?」

の言い回しがモノマネできるくらいには好き。

 

・応援団女子

ポジション的に割と難しい位置にいる役の人。

バンと目立つことはないけども、シーン頭や場面切り替えでアタックを与えるという部分をきっちりやっているので見てて安心タイプ。

歌声はさすがの一言。

役作りからなのか、あまりみんなの輪に加わらず一歩引いたところから周りを見ているという光景をちょいちょい見かけた人。

ただその際の眼光が鋭い。うん。鋭いのよ。

割と思い悩むタイプなのかね。

頂いたバスソルトはありがたく使わせてもらおう。

 

・メガネのターン!くん

初めて稽古を見に行った時に一番不安になった人。

ボソボソっと台詞を喋る彼を見て、図面を見ながら

「奥エリアで喋られたらどうしようかなー」

と頭を悩ませた思い出。

ところがふたを開けてみれば、回を重ねる毎に何なら一番声出てんじゃねーか!というくらい出す出す。

ストンプの時はガンマイクで拾うシグナルが一番大きいのが彼だった。

思い過ごしとはこのことよ。

エンターキー・ターン!のSEは結果的にお蔵入りになったけど、あと5つ音の種類があったのは内緒。

 

・庶務の美人娘

マウスガードの試着の際に初めて顔を見て、顔ちっちゃいなーと思ったのが第一印象。

見た目とは裏腹に色気があるので、会計の男の子とのシーンが恋愛の匂いが強めに出そうだなーと思っていたけど、本番ではうまいこと収まってた。

Mが入ってからすぐにサスに飛び込んでくるところがあって、喋りだしのタイミングとM落としをどう合わせようかと考えていたけど、すぐに修正して合わせてくれていた?のでありがたい。

まあそのシーンの溜めが段々延びて暗転の尺まで使いそうだったのはご愛敬。

伝えてすぐ対応してくれる、その当たり前を真っ直ぐにやってくれるいい庶務でした。

たまに舌足らずになるので外郎売りをオススメしたい。

、、、またえらそうか?

 

・半裸の吐息マン

とにかく声は文句なし。

見た目もイケメンなんだろう。

だがしかし。

彼のせいでしばらく本番中思い悩む羽目に合った。

とある撮影シーンで、台詞はなく音楽だけを拾ってるはずの床置きマイクが、いつも何かを拾っている。

フェーダーを下げているのでスピーカーからは出ないが、常にそのシーンになるとシグナルがくるのだ。

しかも4つある内の一ヶ所だけ。

なんだこれ?

気になってマイク卓にイヤホンを繋いで本番中に音を確認してみたら、、、

「ふー、、、ふー、、、」

死体の吐息やないか!!!

ソッとイヤホンを外しましたよ。

半裸になって興奮してんじゃねーぞ!

などと思ったり思わなかったり。

とはいえ、いい声が大きく出る。

これだけで充分魅力的なんでプラマイゼロ。

 

・ふんわり系でもやっぱり男くん

色々あった今回の中でも一番色々あった人だろう。

本番期間中にエア・キャッチボールしながら初めてちゃんと会話したけども、やっぱり内面はしっかり男の子だったね。

経験としては間違いなく今後の糧となるだろうから、うまいこと消化吸収して欲しいところ。

頑張れば何とかなるではなく、何とかするためにどう頑張るのか。

周りには恵まれていそうなので今後に期待。

 

・拳銃みたいな発声の議長

挨拶しかしていないなーと今になって気付く。

でも印象には残っていて、それは声。

何というかピストルみてーな発声するな、、、と毎回思っていた。

良くない意味ではなく、不快とかでもない。

でもなーんか鋭い声。

役どころによってはすげー武器になるだろうな。

 

・ある意味大変な後任神

役が交代する時ってどうしても前任がフューチャーされがちなんだが、後任だってそりゃ大変よな。

求められるのは間違いなく前任以上。

それを身内にもお客さんにもハッキリと提示しなければならない。

そりゃしんどいぜ。

しかしまあチャンスと捉える思考回路も仕事的には必要だし、どんな気持ちで日々やってたのかな。

音響的にはグローブで球を掴む感覚がどうも俺とは違うようでちょいちょいズレちゃってごめんなさい。

両方とエア・キャッチボールしとけば良かった。

 

・アカヤさん

もはや知り合って長いので名前もまんま出します。

本人も言ってたが、間違いなくこの期間中チリトリを一番リズミカルに叩いた人選手権世界一の称号が与えられるだろう。

酸いも甘いも知る男がきっちり仕事を全うする姿は尊い。

今後もどっかで会うだろうから書くことなし。

 

・存在感超強めのお姉さん

以前同じ現場で芝居を見てからというもの、その圧倒的な存在感にはいつも感服。

小劇場感はありつつ、こういった座組に入ってもその存在感は埋もれることなく発揮されていた。

演出助手を兼任しながらやってんだからそりゃすごいよ。

飛び道具も地肩も持ってる好きな役者さん。

はるちゃんの扱いをあんまり雑にしてるとキラわれそうなので気を付けます。

 

・電波発信副議長

ターンのキレはピカイチ。

きれいな女の子。

芝居の感想を書きたいところだけど、ワイヤレスマイクの電波の印象が強すぎ。

冗談で電波出さないでねーなんて言ってたけど、彼女のせいではない。

混信とかではなく、

「よく解らない電波を拾う」

というもの。

詳細は伏せるけども、おそらく場所的なモノだと思う。

機会があれば別の場所でまた彼女にマイクを使ってもらおう。

不安にさせて申し訳なかったな。

 

・デカイお兄ちゃん

役だけでなく、座組全体のお兄ちゃんだった人。

初めて稽古を見に行った日、稽古終了後にそれこそ円陣みたいに集めて

「このままじゃだめ」

と言葉を選びながらもハッキリみんなに伝える姿は歴戦の猛者のソレ。

言わなきゃいけないキワキワを見極めて、怒るでもなく諭すでもなくしっかりと事実をしっかりとした目と声で伝える。

これってどんな立場になっても難しいことなのよな。

俺なんか自分の座組ならすぐ怒鳴っちゃうもん。

最初の稽古でそれを見れて、

「あー、こういう人がいるなら大丈夫かな」

と漠然と思った記憶あり。

芝居はというと、そりゃ特に言うことなんかないゼ。

誰よりも早くアップを始めるし、台詞の確認に毎日怠りなし。

小屋サイズ、環境なりの発声もお手のもの。

だからこそマスクして出てきた時は

「何かそういう打ち合わせがあったのかな」

くらいに思っていたら、カーテンコールでまさかの告白。

あれは面白かったな。

 

・貫禄の巨頭

年輪がしっかりとした芝居。

何を言ってもえらそうになるので芝居に関してはノーコメントで。

とにかく何をやっても成立させるのは流石の一言。

話すと気さく且つ穏やかな声音。

そりゃ経験値が違うなーとなる。

姉が昔から好きだと言うので、写真撮って見せてもいいですかとお願いしたら快くOKしてもらって感謝。

ミーハーなのは苦手なんだけど、たまにはこういうのも有りかな。

 

・はるちゃん

毎度毎度むめむめに入ると何だかんだ大変なことになる。

そういう星の元に生まれたのだろう、この娘。

今回もいつにも増して頑張ってました。

小屋入りしてからも毎日ブースの横にチョコンと座り、頭を抱え、ため息をつく。

休む間もなく演出の顔、制作の顔とコロコロ変わりながらも動く動く。

大して助けてあげられないのが俺の宜しくないところだけども、ホントに限界くる前に変に口出してもね。

すぐプンプンするからな。

企画が立ち上がって、割と初期から大変そうだなーと話しながら進んだこの公演。

誰が欠けても出来なかったことは確かだけど、やっぱりはるちゃんが一番頑張ったと俺個人は思ってる。

一番決めるもんでもねーけどさ。

プロだから、仕事だからは勿論そうだが、付き合いの中としては褒めてあげたいなーという気持ち。

、、、やっぱえらそうだな俺。

とにもかくにも今は労いの思いのみ。

はるちゃんお疲れ。

まとめ


この話を請けて原作も全巻読んだ。

座長と同じ岐阜羽島生まれ、舞台となる川越に今現在住んでいるということで、何かしらのご縁かと思う。

夕方のチャイムを録音しに行ったり、川越の川の流れを録音したりもしたが、結果的に川の流れる音は川越も効果音集のやつも同じだった。

かなしい。

慣れてる小劇場現場とは違って色々と大変なこともあったけども、無事に終わった今はやって良かったと思ってる。

何よりお客さんの熱がね。

ホントにありがたいなーと実感できた。

拍手の音だけは効果音集のやつじゃ勝てないのよな。

配信視聴で応援してくれる人の力も思い知ったし、やっぱりお客さんあっての演劇なんだと当たり前のことを再認識させてもらえた現場でした。

素直に真っ直ぐただ演劇をやる。

その姿勢の大切さを改めて教えてくれた出演者にも感謝したい。

変わったのは僕自身だ。

この言葉を良くも悪くもするのも自分自身。

いい感じに変わるよう頑張ります。

読んで下さった方、ありがとうございました。

それではまた。