「暗転チェック」とは何かをわかりやすく解説します。

演劇の舞台では、シーンや場面を切り替えるときに「暗転」と呼ばれる手法をよく使います。

「暗転」とは、舞台の照明を一度すべて落として真っ暗にし、その間に舞台装置を動かしたり、俳優の位置を変えたりすることを指します。
暗闇の中で行うことで、観客に舞台裏の動きを見せずに物語を円滑に進めることが目的です。

しかし、照明を完全に消しても、劇場内が完全な暗闇になるわけではありません。
実際に暗転してみると、非常灯や隙間から漏れる光、さらには外の自然光など、意外と明るい部分が残っていることがあります。

これでは観客に舞台裏の動きが見えてしまう可能性があるため、「暗転チェック」という作業が必要になるのです。

暗転チェックでは、舞台が本当に暗くなるかどうかを細かく確認し、明るさの原因となる光を一つひとつ取り除いていきます。

以下に、その主な作業内容を説明します。

非常灯の光を遮る
消防法により、劇場内には非常灯が設置されており、これを完全に消すことはできません。

そこで、劇場の許可を得て「ゼラ」と呼ばれる薄い色付きのフィルムを非常灯に貼ることで、光量を調整します。
また、本番中はその場所に係員を配置し、必要に応じて光の遮断を補助します。

隙間から漏れる光を防ぐ
舞台裏には、楽屋や着替えスペース（鳥かごと呼ばれる簡易的なものもあります）、小道具置き場、音響や照明の操作ブースなど、作業に必要な明かりが点いている場所がたくさんあります。

これらの隙間から漏れる光を遮るために、布や板、ガムテープなどを使って丁寧に隠していきます。

公演が昼間に行われる場合は、太陽の光がどこかから入り込むことがあります。
最初の暗転チェックを夜に行うと、昼間の本番時に予期せぬ光が差し込むことも考えられます。
そのため、窓やドアの光漏れも事前に対策しておく必要があります。

小劇場などでは、観客席からの光が問題になることもあります。

たとえば、携帯電話の画面や通知ランプが暗転中に点灯すると、それが舞台に反射して目立つことがあります。
観劇する側も、舞台の一部を担う協力者という意識を持ってもらうことが大切です。

どうしても完全な暗転ができない場合や、劇場の設備上の制約がある場合は、演出を工夫することもあります。

たとえば、次のような方法が取られます。

・観客の視線を舞台の中心からそらすために、逆光やスポットライトを使う。

・あえて暗転せず、明るいまま舞台転換を行い、その動きを演出として観客に見せるなど。

暗転チェックには細やかな注意が必要です。
大丈夫だと思っていても、日によって思わぬ明かり漏れが発生していることもありますので、客入れ前に毎回暗転確認をすることが肝要です。

また、小劇場では観客の協力が必要な場面もあります。
観劇者の皆さんも、携帯電話の電源を切ったり、光が漏れないように工夫したりして、舞台の成功を一緒に支えていただけると嬉しいです。

暗転チェックは、観客により良い舞台体験を提供するための大切な準備作業です。
一つひとつのチェックが積み重なり、感動的な舞台の裏側を支えているのです。


【参考文献：シアターリーグ様】
http://www.moon-light.ne.jp/termi-nology/meaning/anten-check.htm