自分は演劇が好きではない。



ここ何年かそんなことを思っている。



芝居に関わり始めてそこそこ年月も経ち、今更かよ!と知り合いには突っ込まれるんだが、ちょいちょい



「俺って演劇が好きではないんだなー」



と思うことが増えてきた気がするのだ。



好きでなくては続けられない世界と言われるこの業界でこれはいかんぞと思い、今回は何故そう思うようになったのかを考えてみることにする。




そもそも芝居が好きなのか




これはねー、



よくわかんない



たまに演劇愛みたいなのを熱く語る人がいるけども、これはホント人によって聞ける聴けないが分かれる。



ちゃんと演劇を真面目にやってきてる方、今まさに一生懸命真っ直ぐにやってる人が語る演劇への想いは聴いていられるし、こちらから聞きたいことも出てくるのでとても楽しい。



逆に不真面目こそ演劇人とか、ただの逃げ道や自己顕示欲に演劇というツールを都合よく切り取って使う人間の吐くエンゲキアイは音としても聴けたもんじゃない。



お前はどうなんだと問われたらどちらにも属さない中途半端な感覚なので、基本的に演劇愛なんて切り口で人にモノを話すことはない。



でも現状自覚してるのは、演劇や芝居そのものが好きなのでは決してないが、好きな人間と好きな空間を一緒に創ることは好きなんだということ。



もしくは自分の好きなように描いた世界を好きな奴らと創り上げることが楽しいだけなんだろう。



その手段がたまたま演劇だったというだけの話。



だから無償の愛みたいなノリで芝居が好き!とはどうあってもならないなと思う。




お金との関わり方が感覚を変える




前述した無償の愛的な好きではないんだろうなと具体的に感じるようになった大きな要因としては音響をやり出したからだと考える。



個人的に小劇場規模では大まかに主宰、役者、スタッフのお金に対する感覚が全く違うと感じる。



特に演者はチケットノルマがあるかないか、チケットバックがあるかないかで身入りが多少変わるくらいで、厳密に仕事として生活の糧として芝居をお金では見ていない人が多い



実際自分も劇団に所属していた頃や旗揚げして芝居をやった時は、お金は何とかするものであって芝居で稼ぐような感覚ではなかった。



ただ漫然と作品を創ること・芝居をやっていることがメインであって、関係ない人からしたらそれによって金銭的に苦しくなったとしても続けているということが芝居が演劇が好きだからに繋がって見えるかもしれない。



事実そう言っている人にもたくさん出会ってきた。



「芝居が好きだから。お金じゃないんだよ。」



そういうのもあってもいいと思うし、詰まるところ本人の問題だから他者がどうこう言うことでもないと思っていた。



スタッフをやりだすまでは。



スタッフをやると「お金じゃないんですよ」とはならない。



もちろん中には「趣味だから」と言う人もいるだろうし、それで生計をたててない人が言う分には問題ない。



でも自分は音響仕事も生計に入ってきてるのでそうはいかず、最低限生活できる&他の音響さんの価格崩壊を招かないレベルのギャラは頂かないと仕事として成立しないのだ。



以前ブログを通じて音響の依頼をされた時の話。



ギャラは支払えないが謝礼はお渡ししますとのこと。



予算がわからなければお請けできないとやり取りしていく中で、



「演劇とか芸術って最終的にはお金じゃなくないですか?」



というような論点に変わっていったのでお断りした結果、



お金のことしか考えてない、演劇をまったく好きじゃない音響



と書かれました。



その時は何を言ってんだかくらいに思ったけど、いや待てよと。



一概に的を得てないとは言えないんじゃないか?と、どこか心に引っ掛かったのを覚えている。



おそらくこの時が、自分は演劇を好きではないのかなとボンヤリ思い始めたきっかけだったんじゃないかな。



ホントに演劇そのものが好きだからお金なんて二の次!というのが真の演劇愛なのだとしたら、間違いなく自分にはそんなものはない。



仮にそんな演劇愛を持ってる人がいたとしても、その愛を他者にまで押し付けることはおかしいし、それが成り立つのは劇団とその劇団員くらいのもの。



そう考えると劇団ってすごいね。




結局は一緒にやる人間次第




ありがたいことに現状やらせて頂いてるクライアントさんは皆いい人たちばかりで、そんな俺の演劇に対する愛があるのかないのかなんて関係なく楽しく現場に居させてもらっている。



だから恐らくではあるが、お金のことしか考えてなくて演劇をまったく好きではないとまではいかない人間なのだと思う。



だってそんな奴に誰も仕事ふらないでしょ。



誰かに必要としてもらえてる限りは、ほんの少しくらいは演劇が好きな気持ちが自分にもあるんだと思いたい。



そしてそんな自分を必要としてくれる人たちや、自分が必要とする人たちが演劇の世界にいてくれることに感謝だね。



ありがとうございます。



そんなこんなで現状の自身を省みて、やっぱり胸を張って



演劇が大好きです!



とはいかないことを再確認したわけだけど、これはこれでいいんじゃないかなと思う。



友達曰く



要するに演劇愛を口実に色んな話を誤魔化す奴が嫌いなんだろ



だとのこと。



・・・・・いや、それはそうだけどそれ言ったらまあまあ色々、、、



まあいいか。



そうです。



それで仕事がなくなるならそれでいいと思ってる。



やっぱり同じものを同じように好きな人間とだけ仕事してたい。



これって贅沢な我が儘かなー。



でも好きなことってそういうことだと思うから良しとしよう。



これからも一緒に演劇を創る方々、どうぞよろしくお願いします。



スキルアップは頑張ります。。。