声優を目指す中学生や高校生から良く聞かれる質問に


「今の内からやっておいた方がいいことはありますか?」


というのがある。

個人的な意見としてぶっちゃけると、何となく一人でやれることを一人でやったところで大して影響はない


練習量や反復作業量がそのまま技術やセンスに直結するような仕事ではないのだ。

うまい人はやらなくてもうまいし、できない人はどれだけやってもできないこともある。

理不尽な選択がまかり通る世界に入って、しかも選択される側になろうというんだから酔狂なものだ。

 

話が脱線したので戻そう。

真面目な話、演劇部に入ってたり一見演技に役立ちそうなことをやってる方が後々有利かというと全然そんなことはない

少なくとも中学生、高校生の時点で演技に役立つ為の何かをしていなかったから声優になれなかったなんてことは絶対にない

なれなかったのは、ただなれなかったということ。それだけだ。


例えば、売れてる声優さんが雑誌のインタビューなどで「演劇部での経験が役に立った」とコメントしたとしよう。

でもそれは演劇部に入っていたからなれたということじゃあない。


その人にとってはたまたま役に立っただけのことなのだ。

成功者に学ぶことは良いことではあるけれども、あくまで自分と同じ人間ではないということを頭に入れて取捨選択をしてほしい。

 

とはいえ、何かやってるほうが心が落ち着いたりモチベーションが保てるというならそれらしいトレーニングを積むのもアリだろう。

 

以下に如何にもそれらしいことを並べておくので、参考程度に取り組んでみるのもいいと思う。
オススメは「6.本をたくさん読む」。

これはもう間違いなく役に立つと言い切れるので、とにかく読みまくろう。

学校は図書館なんて最高の施設があるんだから使わない手はない。

図書館の本全部読破してやるぜ!くらいのつもりでいくのが吉。

 

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注意点。

間違っていたり勘違いしたやり方で変なクセがついてしまうと思った以上に修正が効かないことも多いので、あまりストイックに反復しないように。



1.腹式呼吸


発声において最も重要なことは「呼吸」。

素早く吸って、一定の量で息を吐き、可能な限り長く使う。

これが理想的な呼吸法だといわれる。

大きな声を出し、長いセリフを喋る。

そのためには「腹式呼吸」をマスターすることが肝要。

腹式呼吸を練習する上で重要なのは以下の3つのポイント。

  • 腹式呼吸のポイント

  • 空気は鼻から吸う

  • 背筋を伸ばす

  • 肩は動かさない


上手くできない場合は仰向けになりお腹(下腹部)に手を当てながらやってみるとよい。

息を吐くときにお腹がへこみ、吸うときに膨らめば成功してる可能性が高い。



2.アーティキュレーション


アーティキュレーションとはいわゆる滑舌

セリフを聞いている人にはっきりと伝えるためには必要不可欠な技術。

上達には早口言葉を読み上げることが手っ取り早い。

練習する際はスピードよりも、母音を一語一語はっきりと発音することに重きを置いて。。

【例文】

・この竹垣に竹たてかけたのは、竹たてかけたかったから竹たてかけたのです。

・おあやや、母親におあやまりなさい。

・赤巻紙、青巻紙、黄巻紙、長巻紙。

※外郎売は正直あまり練習にはならないかな。。。



3.鼻濁音


「が・ぎ・ぐ・げ・ご」などの濁音を普通に発声するのではなく、柔らかく滑らかな印象を与えるよう鼻腔内に響かせるように発声するのが鼻濁音。

いわゆる「鼻にかかった声」「鼻声」と呼ばれるもの。

簡単な練習法としては、「ん」の音をつけるというもの。

鼻から息を吐くことを意識しながら「んー」とハミングするように音を伸ばした後、「んーが」というようにが行の音をつける。

そして徐々に「ん」の音を短くしていき、鼻から息が抜けるよう意識しながら「ん」と「が行の音」をほぼ同時に発音してみる。

ただこれは人に聴いてもらわないと聴きやすいかどうかは自分では判断付かない。



4.早口を治す


早口を治すのに一番大事なことは普段の喋り方から気をつけること。

日常的にしていることは癖になりやすく治そうと思っても簡単ではない。

普段の喋り方から早口にならないよう意識して喋ること。



5.肺活量を鍛える


声優としてセリフを喋る場合、長いセリフを「一息で」との要求で息継ぎなしで喋らなければならない場合もある。

肺活量が少ない人はできる限りしっかりと鍛えておかないと後々苦労することに。

【肺活量の鍛え方】

①足踏みをする

②足踏みしながら息をたくさん吸い込む(以下足踏みをしながら)

③限界まで吸い込んだらそのまま5~10秒維持する

④10秒かけて肺の中が空になるようゆっくりと息を吐き出す

これを1日50回も繰り返せば肺活量を鍛えることができる。



6.本をたくさん読む


声優の仕事には当然台本がある。

まずは漢字・言葉を知らないとお話にならない。

また、台本に書かれていることの流れを読む力、つまり読解力がないとこれもまた演技が単調になったり・・・とお決まりの文句は抜きにして。

物語を自分の中で創り上げるくらいの想像力がなかったら他人に声でその情景を届けるなんてできるわけもないという単純な話。

その想像する力を与えてくれる魔法のツールが本なのだ

好みはあってもいいが好き嫌いで選り好みせず貪るように何でも読むべし。

逆に本を読むのが苦手とか嫌いな人は端から声優なんて向いてないよ。

 



7.表情筋を鍛える


発声や発音は口の動きだけでなく、顔全体の使い方によって変わってくる。

何なら身体全体なんだけども、ここでは顔のみ。

顔の表情筋が硬い人はどうしても表現自体がワンパターンになりがち。

逆に顔の表情筋が柔らかい人は多彩な演技をすることが容易になる。

笑顔で喋ると声も柔らかくなるでしょ。そういうことね。

 

【簡単にできる表情筋のトレーニング】

前から顔を紐で引っ張られているように口をつきだし、目や口を顔の中心に集める。

つまり梅干しとかすっぱいものを食べた時の顔を10秒間続け、10秒後に思い切り顔の力を抜く。

これを5回繰り返す。

誰にも見せられないなってくらい顔を力づくで崩すのがポイント。



番外.喉を中心に自分の身体を知っておく


発声の土台となる喉のケアはプロになったら最重要項目。

風邪を引かないようにする、喉に良くない食べ物は控える・・・なんてのはよく言われるけども、せっかくの成長期。

ガンガン好きなもの食べて、ガンガン体調崩すのも大いにアリだと思う。

その中で、自分の身体のクセみたいなものを把握しておこう

これをやったら風邪ひくんだなーとか、

これ食べると喉の調子よくないなーとか、

自分の身体は自分しか解らないこと多いからね。

もちろん完璧に体調をコントロールできるのが一番なんだろうが、そうもいかないのが人間の常。

徐々に徐々にでいいから、自分で自分の身体を律することができるように意識していこう。




 

まとめ


今回書いた内容はトレーニングとも呼べない程度の基礎練習とはいえ、本来ちゃんとした指導者の下で行うべき内容だということをまずは念頭に置いてほしい。

試しに何となくやってみるくらいで納めてくれるのが理想的ではあるが、ガッチリやってみたいという人は無理のない範囲でやってみるといいと思う。

中学生・高校生くらいなら、勉強や部活の合間の息抜きくらいの感覚でやるのがオススメ。

とにかく苦しいくらいならやらないこと

楽しかったらやる。

これが大事。

やりたいことと向いてることは往往にして違うってことに気付けるかもね。